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DNAメチル化が適応進化の引き金になることを実証 ―多層的オミックス解析で新たな生物進化のメカニズムを解明―

トピックス プレス情報 掲載日:2021年05月21日
最終更新日:2021年05月28日

DNAメチル化が適応進化の引き金になることを実証
- 多層的オミックス解析で新たな生物進化のメカニズムを解明 -

 

九州工業大学大学院情報工学研究院の花田耕介教授(研究代表者)、白井一正研究員、東京大学大学院新領域創成科学研究科の鈴木穣教授らからなる研究グループは、植物のモデル生物であるシロイヌナズナで多層的オミックス解析*1 を行い、種内の遺伝子発現の多様性にDNAメチル化*2 が大きな役割を果たしていることを発見するとともに、その中でも病害菌や環境ストレスへの耐性に関わる遺伝子発現に影響するDNAメチル化に強い自然選択圧*3 が働いていることを明らかにしました。この研究成果は、DNAメチル化が生物の適応進化を引き起こすことを実証するものであり、今後、進化やゲノム分野のみに留まらず、育種などの幅広い分野に大きな影響を与えることが期待されます。

 

ポイント
  • DNAメチル化は遺伝子発現を制御することで、生物にとって有利な変化を引き起こすことは知られていたが、それが適応進化に関わるという証拠は報告されていなかった。
  • 世界各地に自生するシロイヌナズナの生態株で多層的オミックス解析を行い、遺伝子発現を強く制御するDNAメチル化を網羅的に見いだした。
  • 見いだしたDNAメチル化の一部が強い自然選択圧を受けていることを発見した。

図1 植物におけるDNAメチル化が引き金となる適応進化


生物の遺伝情報であるDNAは、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類の塩基から成り立ち、この塩基の並びの違いが、生物の違いを作り出す根本原因となりますが、シトシン(C)の一部には、DNAメチル化と呼ばれる化学修飾が起こります。このDNAメチル化は、近傍に存在する遺伝子の発現に影響を与えます。さらに興味深いことに、DNAメチル化の一部は、親から子へと安定的に遺伝することが知られています。このため、DNAメチル化が、生物の適応進化の引き金になる可能性が提唱されていました。しかし、自然変異で起きたDNAメチル化が、数百から数万世代というスケールの生物進化において、実際に適応進化の原因になったことを示す証拠はありませんでした。

そこで本研究グループは、多様なオミックス情報(ゲノム、トランスクリプトーム、メチローム、メタボロームなど)が明らかになっているシロイヌナズナを利用して、DNAメチル化と生物進化の関係解明に挑みました。その結果、世界各地に自生するシロイヌナズナの620に及ぶ生態株のゲノムの全遺伝子周辺領域において、生態株間で多型になっているDNAメチル化を特定し、DNAメチル化が原因で、遺伝子発現が大きく変動する遺伝子を見いだしました。これにより、DNAメチル化は、DNAの一塩基の変異よりも遺伝子発現を大きく強く変化させることが明らかになりました。

さらに、遺伝子発現を大きく変化させるDNAメチル化は、植物の二次代謝産物の合成に関係する遺伝子の近傍に多く存在することも明らかになりました。植物の二次代謝産物は病害微生物からの防御や環境ストレス応答に関連する機能を有しており、シロイヌナズナの生態株がそれぞれの自生地域で生き残るために重要な役割を担っています。そこで、二次代謝産物に関連する遺伝子周辺のDNAメチル化に着目し、メチル化がシロイヌナズナの集団で引き継がれている割合を調べました。その結果、遺伝子のプロモーター領域に存在するCGタイプのDNAメチル化を、シロイヌナズナの集団が選択し続けている痕跡があることを集団遺伝学解析で明らかにしました。これらの発見は、DNAメチル化が近傍の遺伝子発現を変化させ、二次代謝産物の蓄積量を変化させることで、新たな環境に適応する進化メカニズムが存在することを示しています(図1)。

本研究成果は、DNAメチル化が生物の適応進化を引き起こすという新たな進化メカニズムを明らかにするものです。本研究で得られた知見は、進化、ゲノム分野だけでなく、育種などの幅広い分野へ大きな影響を与えることが期待されます。

なお、この研究成果は、米国科学雑誌「Genome Research」(2021年5月18日(火)13時(米国時間))に掲載されました。

*1) 多層的オミックス解析:

ゲノム、トランスクリプトーム、メチローム、メタボロームなどの複数のオミックス情報を組み合わせる解析方法。これにより、これまで明らかにできなかった複雑な生命現象の解明が可能になる。

*2) DNAメチル化:

DNAのシトシン(C)にメチル基が付加される現象。この修飾の一部は、植物では親から子へと安定的に引き継がれ、DNA配列の変化なしに遺伝子発現を変化させることができる。

*3) 自然選択圧:

生物が何らかの変異を獲得した時、この変異が生存率に影響する場合、自然環境の力がその変異を種内に広めるもしくは排除するような一定の方向へ生物を進化させる現象。

論文の詳細情報

タイトル:

Positive selective sweeps of epigenetic mutations regulating specialized metabolites in plants

著者名:

Kazumasa Shirai, Mitsuhiko P. Sato, Ranko Nishi, Masahide Seki, Yutaka Suzuki, Kousuke Hanada

雑誌:

Genome Research DOI: 10.1101/gr.271726.120
※ 本研究は JSPS科研費JP20H05905 の助成を受けたものです。
【報道に関するお問い合わせ先】
 国立大学法人九州工業大学 総務課広報企画係
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 E-mail:sou-kouhou*jimu.kyutech.ac.jp

【研究内容に関するお問い合わせ先】
 国立大学法人九州工業大学大学院 情報工学研究院 教授 花田 耕介
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